◆最近「ネットサーフィン」という言葉を聞かなくなったのは、もう誰もインターネットに対して「電子の海」なんてイメージを抱かなくなり、インターネットが情報ツールとして現実的な市民権を得た結果なのかもしれません。

でも、結構いい言葉だと思います。ネットサーフ。なんか、想像力をかき立てられて。などと考えていますと、ネットにも波があるような気がしていきます。

どーっとビッグウェーブが押し寄せて、役に立つ情報からくだらないことまでぜーんぶまとめて「どどーん」と来ることもあれば、「ん?今日はどしたんだろ?」と思うくらい静かな日も。

ここ数日、僕が巡っている電子の浜辺は凪のように穏やかな日が続いているように思います。と、いうよりむしろ、僕とネットとの間に穏やかな関係が続いている、といったほうが正しいかもしれません。

◆そんなわけで、最近はずっとビデオを観ていました。3月9日に行われた名古屋国際女子マラソンの。
「結果がわかっているスポーツほど観ていてつまらないものはない」と言われるけれど、このレースに関しては何度観ても面白いです。

レース開始前には「高橋尚子選手がどんな走りをするのか」という点にテレビ中継のフォーカスが合わされていたのが、開始直後の9キロで高橋選手がガクリとペースを落とす展開になると、レポーターの方々は蜂の巣をつついた騒ぎになってしまいます。

そんな周囲の騒ぎはよそに、レースは先頭集団に20人以上がひしめく静かな展開。結果を知っている今になって観れば、2時間後にトップでゴールする中村友梨香選手が集団の中で息をひそめて黙々と足を運んでいる様子に、プレッシャーという精神的な向かい風のない堅実さを感じます。

その後、32キロからのスパートで逃げ切った中村選手がゴールテープを切り、喜びのインタビューへ。冒頭、高橋選手を追いかけていた中継も、21歳でマラソン初挑戦の優勝者が世代交代を示唆する日本女子マラソン、というシナリオで新たな方向性は決まった様子。

後日、レース前に「あきらめなければ夢は叶うというメッセージをみなさんに伝えたい」と繰り返し言っていた高橋選手が昨年8月に右ひざの手術をしていたことが判明しました。

「あきらめちゃだめだ」と誰かに伝えたかったのは、「あきらめちゃだめだ」と何度も自分に言い聞かせていたから。他ならぬ自分が「あきらめちゃだめだ」と誰かに言って欲しかったから。そんな、孤高の存在ゆえの孤独感とも、何でもない一人の人間としての弱さともとれる言葉を胸に、いまだゴールを目指して走っている高橋選手を最後にビデオテープは終わります。 …ため息。

この際、順位はもうどうだっていいのです。彼女達は手ぶらで、何もない状態でただ、走っている。けれど身体では鍛えあげた筋肉がうねり、頭では培った経験が反すうされ、胸中では闘志と不安とがまぜこぜになりながら、全人格を賭してレースに挑んでいる。何も持っていない。けれど、その人のすべてがここにある。その姿をとても美しいと思いました。

◆一人のランナーとして、僕が彼女達と同じ境地に立てるとは到底思っていません。が、毎日を送る中で彼女達と
同じ志を持つ事ならできるかもしれないと思いました。

少し前から部屋を片付けていたのですが、この度さらに掃除をして、捨てられるモノはほとんど処分してしまいました。モノを大切にしなければ、という思いは当然にしてありますが、環境も「込み」で自分の身体だと考えてみると、身の回りのものにも血や骨ほどに重要なモノもあれば、脂肪のようなモノもあると思ったのです。

体脂肪率の1%は体重の1%の重さです。脂肪が生命活動に必要なのと同様、生活に趣味や遊びの要素がゼロというわけにはいきませんが、僕の体脂肪率に比べて身の回りの「モノの脂肪率」はずいぶん高いと感じたのです。

そういった考えに基づいて片付けを進めた結果 、自室に残ったのは仕事の書類と何冊かの本、それからパソコンとステレオセットになりました。事実、ずいぶんと気持が軽くなり、片付いたぶん目的のモノへのアクセスが速くなったので作業効率が上がったように感じています。


◆身体と同様、生活習慣を最適化することによって変わる意識があります。「あきらめなければ夢はかなう」というメッセージを鵜呑みにできるほど純粋ではないにせよ、そういったスポーツマンシップを「見る」という行為が自身に与える影響力を実感しました。

人は自分自身の生活の中からしか学ぶことができない以上、見える、聞こえる、触れる、香る、食べる、 そういった行為に対して漠然と受動的でいるのではなく、意識的に工夫を重ねることによってしか人は成長できないように思えるのです。

◆戦国時代の茶人、千利休と織田有楽斎との間にはこんなエピソードがあったそう。

「なんでもあり」と「なんでもない」という矛盾する二つの事柄を両立できるのが人間の特性だとしたら、なんとかその場所へ少しでも近づきたい、と思う気持が2%。残りの98%は春ってすごい眠いと思っています。